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The LAB

2018/09/07

前にWindowsMRの記事を書いてからずいぶんと時間が経ってしまいました。
今日までに結構色々なVRゲームをプレイしてきましたので、これからちょいちょいとレビュー書いていこうと思います。

まず紹介するのは、一度でもプレイしたことのある人なら誰しも「最高のVRゲー」と評価するゲーム「The LAB」。
なんと無料でSteamにて配信中。
ニュアンスとしてはVRの楽しさを「試しに体験」するためのゲーム、という向きが強いのですが、それが結果として現状最高に楽しいVRゲームになっているの、Nintendo64でローンチにマリオ64が出ちゃったみたいな強みを感じる。

The LABを遊ぶ前に、まずSteamVRをインストールしておきましょう。
SteamVRは、Steamで配信されているVRゲームをVIVE、Oculus、WindowsMRなどのハードの区別なく動作させるためのプラットフォームです。
ときにはSteam関係ないはずのソフトもこれを経由して動作することがあるので、PCでVRゲームをやるなら100%入れておくべきソフトです。


The LABを起動すると、プレイヤーはLAB(実験室)の入り口に立っていることに気付きます。
手元のパネルから中に入りましょう。



中はまさに「散らかった実験室」のようですが、そのとおり散らかった実験室です。

各所にあるオブジェクトから合計7つのゲームが遊べる他、そこらに置いてあるものは掴んで持ち上げたり、弓を射って背景にいるシルエット人間を破壊したりすることができます。
ホワイトボードにはマーカーで文字を描くことができるし、それをイレイサーで消すことも可能。
放り投げたものは、足元をうろついているメカ犬が追いかけて、こちらに持ってきてくれたりもします。

この「そこらじゅうにあるものに、実際に触れてみると相応のインタラクション(相互反応)を得られる」という、VRの基本にして最高の体験が溢れている、というのがまずTHE LABの最初の強み。
これまでのRPGゲームなどでは、調べてもせいぜい説明テキストが出るくらいだったアイテム達に、実際に触れて動作させることができるのです。
実際どこまでレスポンスを得られるかはもちろんゲーム側のデザイナー次第なのですが、THE LABはその辺の手抜かりを極限まで小さくすることで、この空間を実在しているかのように演出しています。

各所のアイテムで遊んでみたら、今度は実際にゲームの世界へ行ってみましょう。
ゲームと言っても、半数はVRという概念を体験するためのシンプルなものですが、中には数時間のやり込みでは終われないような奥深いものも潜んでいます。

Post cards


最初に体験するのは最もシンプルな「Post cards」。
ホワイトボードに添付されている絵葉書の空間に、実際に行くことができるというもの。

ボード前にある丸いオブジェクトがゲーム世界の入り口です。
トリガーキーで持ち上げて、それを顔に近付けてみましょう。どのゲームも同じ動作でスタートできます。


ザ・シンプル。
「Post cards」は本当にただ風景を楽しむためだけのゲーム。
四方を見渡してみて、それで終わりです。

風景ごとにいくつか移動可能な地点があり、立ち位置を変えて風景を楽しむことが出来ます。
あとは足元のメカ犬をかまってやるくらいでしょうか。
自分の首の動きに連動して、周囲を360度見渡すことができる、という体験がこのコンテンツの売りでしょう。

Xortex


続いて「Xortex」
少しレトロなゲーム筐体の前のオブジェクトから中に入ると、そこはいかにもサイバネティックな空間。


目の前に浮いている宇宙船を掴むとゲーム開始です。
「Xortex」はこの「手の位置」と連動する宇宙船を動かして、敵の弾を避けながら攻撃する回避アクションベースの360度シューティング。


最初は敵の数も少ないですが、ゲームを進めていくと接近、自爆してくる鉄砲玉タイプや、常時発生のレーザー攻撃タイプなど、攻撃のバリエーションも増えていきます。
プレイヤーは、宇宙船に顔を寄せて精細な回避をしたり、あるいは引いたところから先を読みつつ回避していく必要があります。

回避のためには、このフルトラッキングのVR HMDであちこちを見渡して敵の攻撃を観察しなければならない、というのがこのゲームのキモですね。
見るだけだった「Post cards」から一歩奥へ進んで、観察し、ゲームプレイに活かすという工程が発生します。

人は自分の手を見なくても、自分の手がどのように動いているか、自分で動かしているかぎり把握できるものです。
一つのゲームコントローラーでしかプレイできなかったこれまでのゲームではなし得ない、「見る」と「動かす」の連動。
それをシューティングというジャンルに被せてゲームにしたのが「Xortex」です。

偉そうに語ってますが私はステージ2より先に行ったことがありません。
せめて宇宙船を残基制にしてほしい…。

Long bow


タイトルから察せるとおり、弓射をベースにしたゲームです。
実験室の卓上に置いてある弓はこのゲームで使うものなのです。


中に入ると、小さなテーブル。
近寄ってみると、まるで遊戯王で見たようなTRPG風の舞台が広がっています。
この中のひとりになって、砦を襲いに来る敵兵を弓で倒すのがこのゲームです。


利き腕とは反対の腕で弓をホールドすると、コントローラーが弓に切り替わります。
反対の手には自動的に矢が現れますので、矢をセット、トリガーキーを引きながら弓をひいて、トリガーキーを離すことで発射できます。

敵はプレイヤーの左手側にある砦の扉を壊しに襲いかかってきます。
弓を使って敵を撃ち抜いたり、あるいはギミックを使って砦を守りましょう。
そう、これはVR式のタワーディフェンスゲームなのです。

マップ各所には、撃ち抜くと爆発するトラップだったり、マトを射抜くと熱湯が降ってくるトラップなどが設置されています。
また、プレイヤー右後方にある篝火に矢の先端を当てると「火矢」で攻撃することも可能です。

倒した敵は弾けて緑のバルーンを発生させ、これを射抜くと、削られた扉のHPを回復することができます。
バルーンは割とさっさと飛んでいってしまいますので、敵の撃破に支障が出ない範囲で、ガンガン撃ち抜いていきましょう。

敵、回復バルーン、トラップの始動いずれにも、割と精密な射撃が求められます。
ばたばたと慌ててミスを発生させていると、割とあっという間に壊滅させられてしまいます。

敵の中には兜や盾を装備しているやつも。
装備に一発矢を当てればそれを剥がすことができますが、慣れてくると装備の隙間を射抜いて一撃死させることも可能です。
ただ兜や盾は結構広い面積をカバーしているので、外れたはずの矢がたまたま敵に当たる、というラッキー勝ちをインターセプトされてしまいます。
なるべく被弾面積が大きくなる正面を捉える機会を待って攻撃しましょう。

このゲーム、こちらの攻撃よりも敵の攻撃の方がペースが早くなるので、敵が砦の扉前に複数人集まってしまうと、もう敗色濃厚。
なるべく接近してくる段階で数を減らし、扉の前には多くても一人まで、という状況を作れるように敵を減らしていきましょう。

Sling shot


「Long bow」の隣りにあるのが「Sling shot」なのですが、これはTHE LABを日本語化していると何故か動作しないというバグがあります(黄色い本体にコントローラーで触れても何も反応しなくなる)。
Steamのソフトの「表示」→「設定」→「インターフェース」から言語表示を英語にしてSteamを再起動、言語表示を英語にした状態でゲームを起動すると遊べるようになります。
THE LABはそもそもテキストが少ないゲームなので、英語表記でも困らないと思います。



ゲーム自体は文字通りのスリングショット。
手元に用意された鉄球をマシンにセット、トリガーを押しながら引いて、手を離すと鉄球が飛んでいきます。
エリア内に積まれたダンボールやボム、特殊アイテムに当てて、なるべく多くのものを下にある廃棄穴に叩き込みましょう。


各所にある青い箱を撃ち抜くと手に入る青鉄球。
こいつは飛んでいく軌道を予め教えてくれる便利な球です。ボムに直撃させるなり、追加の青球を狙うなりして有意義に使いましょう。

THE LAB内のゲームでは、これが一番爽快感が高い。
派手に爆発して連鎖して、目の前に積まれていた大量のダンボールがばかすかと落ちていく様は最高にスッキリします。
上手い人がやると用意されてるもの全部崩したりできるのかなー。

Solar system


「Solar system」は「Post cards」同様、眺めるだけのコンテンツ。
太陽を中心にした太陽系の中を自由に歩き回って、星の公転軌道を眺めることができます。

そしてこれ、実は眺めるだけではなく、星を掴んでぶん投げることも可能。
見た目の雰囲気よりも荒っぽいことがプレイヤー次第でできるのも、VRの醍醐味のひとつですね。


ちなみに真ん中に燃え盛る太陽。
気まぐれに手を近付けてみると、脳が誤作動を起こしてほんのり手の先が熱く感じたりしません?
本物の太陽に近付けたら当然熱いじゃ済まないんですが、なぜかじんわり暖かく感じてしまいます。
VRで足元が中空になると、落ちるわけないのに落ちる!と思ってしまうみたいなよくあるアレの一種なんですかね。
「Xortex」の敵レーザー攻撃も、身体に当たるとほんのり熱く感じたりして。

そんな「うまく騙される」感覚を持っている人は、VRゲームに向いていると思います。

Human body scan


こちらは更にカオスな、VR人体模型とでも言うべきコンテンツ。
なんと人体をスライスして、内部構造を観察することができます。


本当にそれだけ。
見た目も怖いのであんまり長時間プレイしていません。やることもないし。

Robot repair


これは男子垂涎の、未来型メカ修理工体験ゲーム。
最初に手元のガジェットを充電するところから始まり、進めると巨大ながらボロボロになったロボが工作室にやってきます。


彼を修理してあげるのがこのゲームの本題なのですが、修理工程が複雑な上に日本語訳が大雑把だったり字幕が表示されなかったり、と英語が苦手な人には死ぬほど難易度が高いゲームです。
私もこれはまだクリアー出来たことがありません。
そもそもクリアーできるように設計されているのだろうか?

修理失敗したときの演出がものすごく凝っているので、英語が堪能な人も一回は失敗してみましょう。

Secret shop


最後に紹介するのは、ハリポタ好きなんかがハマりそうな「ファンタジー世界の雑貨屋」を体験するゲーム。
と言ってもプレイヤーの仕事はマジックアイテムの売買ではなく、店主に代わって店番をするだけ。


開始早々に現れる店主がまたものすごい存在感。
VRで目の前に人がいるとこんな感じなんだ、を体験するのに最適です。




店主が去ったあとは、もう自由。
別にお客さんが来ることはないし、何かしなきゃいけないこともありません。
お店の中にあるアイテムを調べてみたり、観察してみたりするだけです。

アイテムによって動作がそれぞれ設定されていて、つつくと反応してくれる謎の生き物から、小さくなって棚の中を探検できるものまで様々。
なるべく何も知らずお店に行って、驚かされてください。

 

ということで「THE LAB」でした。
ざっと紹介しただけですが、このゲーム全体の面白さの本質は「考えて、触ってみると、相応のレスポンスがある」という点。
それをVRの世界で、リアルと同じスケールで体験することができるのです。

VRと言うと、まず誰しも「仮想現実」的な、作り物の世界に実際に入って遊ぶことができる状態を想像すると思いますが、「THE LAB」はそれを屈指の完成度の高さで実現させています。
目につくアイテムは大抵何かしらのギミックが設定されていますし、逆に何にもならないアイテムはそもそも実験室には置いてありません。

まるで本当に実験室に行って、モノに触れているような体験ができるのがこのゲームのすごいところで、その精度が高すぎるために、VRを楽しむのに最高のコンテンツとして評価されているのです。

これはそもそも「体験すること」に軸を置いたゲームデザインをされているからで、例えばガンアクションやRPGなど、別の軸を持ったゲームではここまで「体験すること」に焦点を絞ったデザインは実現不可能でしょう。
今後あらゆるジャンルでVRゲームが開発されていくと思いますが、その全ての根源を抑えているのが「THE LAB」です。

ちなみにこのゲーム、しばらくプレイしていると真なる「実験」の意味に気付かされると思います。
本当構成が上手いよなあ。

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