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NaissanceE

2019/11/07

久しぶりにPCゲームのお話。
かなり独特な世界観と遊び心地を持ったゲームなので、広い範囲の方に新鮮な空気感を味わってもらえそうなタイトルです。

NaissanceE


とても難読タイトル。
Naissance(ネサーンス)は「創生」という意味を持つ英語で、そこに接尾語「E」がついている…ように見えるのですが、接尾語「E」なんてものは英語にはありません。
ゲーム中でも特に「創生」を感じさせる要素がないので、音の響きで選んだものか、あるいは造語かもしれません。
ちなみにフランス語では「誕生」という意味になる模様。「誕生」感も無いんだけど。

ゲームジャンル

ここの判定がとても難しい。
NaissanceEはいくつかのトガった要素を持ったゲームで、そのどれを目当てにプレイしようとするかで、プレイヤーごとに異なったジャンルという印象を持ちます。

雰囲気ゲーム

これが個人的には一番うまくゲームの印象をあらわしていると思う。



NaissanceEは広大で生活感がなく無機質な、超巨大構造体の中をひたすら探検するゲームです。

構造体のなかに曲線はほとんどなく、ほぼ全てが質感さえ読み取れない白い四角形の組み合わせで出来ています。
四角形は石のようにも見えるし、プラスチックのようにも見えるし、未知の物質のようにも見える。


室内はぼんやりと明るく、時々ライトの役割を持つ光る四角形があったり、なぜか空を飛んでいる光の玉があったりします。

このどこかSF的で人間味を感じない空間を楽しむのが、NaissanceEというゲームが持つ魅力の、大きな一つとなっています。

主人公はテロップで「Lucy」と名前が表示されるのみで、多分女性。それ以外は不明です。
彼女はここから逃げ出したいのか、ここを探検して何かを見つけたいのか、別になんとも思っていないのかさえ不明。
ここから、主人公の能動的な意思によるドラマを見せるゲームでないことはわかります。

本作においてゲームプレイを誘引するのは、プレイヤーの好奇心のみ。
このゲームに、ストーリーは無いのです。

アクションゲーム


この超巨大構造体の中を探検していくと、時に人間には厳しい地形に出くわすことがあります。
高いところから少しずつ飛び降りて下層へ向かわなければならなかったり、飛び石に配置された四角形を、ジャンプを駆使して飛び乗り先に進んだり。

主人公は(多分)生身の人間なので、あまりに高いところから落ちると死亡します。
死なない程度のダメージは時間経過で完治するので、やっぱ人間じゃないかも。
ちなみにダメージ量は、画面が赤く染まった割合で判別できます。画面上にある色は基本的に白かグレーばかりなので、かすかにでも赤いとHPが減った状態だとすぐわかります。

ここで求められるのは、主人公の進む方向をコントロールするマウス操作と、前後左右の移動をコントロールするWASDのキー操作と、ジャンプをコントロールするSPACEのキー操作。
更に一部では、ダッシュ操作に使うSHIFTキーも必要になります。

ときには不安定な足場の上でダッシュ、ぎりぎりの位置でジャンプなんて操作が必要になることもあります。
一人称視点しかないため、客観的な主人公のポジションがわからないのも、難易度を少し上げています。

マリオシリーズや、あるいはダークソウル系みたいな、一瞬の攻防で手に汗握るタイプのアクション要素ではありませんが、アクションの要素が少ない分、言い訳の効かないスパルタンな操作の正確性が求められます。

パズルゲーム

そう多くありませんが、超巨大構造体のなかでは時折頭脳を要求するシーンに出くわします。

一例として、前述した光の玉。
この光は触れると規定のルートを移動する機能があり、この光を適切な場所に当てることで、先にすすめるようになります。


他とは質感が異なる構造体。
この構造体は光を当てると物質化して足場や壁となり、光が当たらなくなれば当たり判定が消え、通り抜けられるようになります。

ときには真っ暗闇の通路で、移動する光を走って追いかけるシーンもあります。
主人公は走っていると時々息切れするので、画面中央に白い丸が表示されたタイミングで、左クリックを押して息継ぎさせてやる必要があります。
ちゃんと息継ぎさせてやれば永遠に走り続けられるので、やっぱ人間じゃないかも。

死に覚えゲー


このゲーム、プレイしているとクリアまでの間に大体100回くらい死にます。
プレイヤーのうっかりで硬い床へフリーフォールさせてしまうこともあれば、人間を殺すためにあるような場所に引きずり込まれることもあります。
死ぬときは画面が赤く染まって、主人公が苦悶の声をあげます。グロテスクではないけど、下手こいてごめん…という気持ちにはなります。

本作はチャプター式になっていて、構造体の中で細かくチャプターが区分されています。
セーブみたいな作業は不要で、規定のエリアにたどり着けばオートで記録され、死んだときはそのエリアから再開できます。

特にハードな死にポイントでは、要所を一個超えるたびにチャプターが切り分けられるので、せっかくここまで行ったのにまた最初からかよ!ということは滅多にありません。たまにある。

推せるポイント

このゲームのどこを一番に推したいかと言えば、私はやはり超巨大構造体の中を探検するというアドベンチャー要素、そして独特の雰囲気を持った背景たちが生み出す雰囲気要素だと思う。

これらの良さについては、テキストで語るよりスクショを見てもらったほうが早いと思う。




どこまでも続くかに思われる長大な廊下。スケール感が狂ってしまいそうなほど広い竪穴。人間の存在を想定していないかのような構造物。
全てが非日常的で、他のゲームでは体感できないオリジナリティに満ちている。

このゲームには隠しアイテムもトロフィーも無いので、マップの隅々まで歩く意味はほとんど無いんだけど、風景を味わい尽くしたいがために、隅から隅までつい歩いてしまう。

アクション要素で少し詰まることがあっても、ここを超えた先にある新しい風景を見たくて、何度もチャレンジしてしまう。
そして実際に新しいエリアに到達したとき、これまでの苦労を忘れて探検に繰り出してしまう。

そんなゲームとして完成しているのがNaissanceEです。

ただ、ゲームとしてのストーリー、主人公の背景が全く見えないため、そこに能動的なイメージを自分で想像する必要は有ると思います。


個人的には、宇宙人が暮らしていた異星の拠点へ迷い込んだ地球人、みたいなバックボーンを想像しながらプレイしていました。
この超巨大構造体は人間サイズの生き物であれば百万じゃきかないくらいの数が生活できる規模があり、かつての生活の残滓もわずかながら覗けるのですが、ゲーム中で生物と出会う場面はありません。

つまり、かつて栄華を誇ったものの、今は絶滅してしまい、生活の拠点としていた構造体のみが今も劣化することなく残っている…みたいな。

あるいは主人公の方こそ宇宙人かもしれませんし、地球のどこかで見つかった先史文明かもしれませんし、物理的には存在しない精神世界かもしれません。

ただ、このゲーム中に、それらのバックボーンの答えは出てきません。
この超巨大構造体はただそこにあって、プレイヤーが自由にその背景を空想する以外の存在理由は実質的には無いのです。
このゲームを楽しめるか否かも含めて、それはプレイヤー次第です。

推せないとこ

本当によく死ぬところ

小さなダメージは実質無視できるので、即死ポイントだけ回避すればいいんだけど、この即死ポイントも結構多い。
前述のとおりすぐ復帰できるけれど、即死自体はモチベーションを削ぐ割合が高い。
正確なキー、マウス操作ができないと難所を越えられなくなる可能性はあります。お助け要素もないし。

メッセージ性が明確でないこと

何か意図しているなこれは、というポイントがあっても、文章で語ってくれることは100%無いので、画面にある要素からゲームの意図を読み取る能力が必要になります。
といいつつ、実はチャプタータイトルを見ると、プレイヤーに何をさせたいのかはある程度察せられるようになっています。困ったら見てみよう。

画面が暗いこと

デフォルトだと画面が本当に暗く、光源の少ない場所では足場の有無さえ判別できません。
ただこれはゲーム内オプションのガンマ値を明るい方へ設定すれば解消されます。
画面が真っ暗なままだと開始即積みポイントが出てきたりするので、適切な明るさに調整しましょう。

リンク

NaissanceEはSteamにて発売中。
ロースペックPCでも問題なく遊べるのでぜひ。
スムーズに進めて、大体全クリまで7~10時間くらいです。

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