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エヴァーメイデン~堕落の園の乙女たち~

2022/04/24

今日は久しぶりにエロゲーのレビューをします。
事前に予約しておいて発売日に買っていたのですが、色々あってプレイが遅れ、先日ようやくクリアしました。その勢いだけで書いています。

以前紹介したタイトルはひどい詐欺とテキストに対する不満を語る記事になりましたが、今回はひたすら「褒め」です。とても良いゲームでした。

エヴァーメイデン~堕落の園の乙女たち~


さて、本作はライアーソフトのリリースした42作目のタイトル。42って。
ガチで女性しか登場人物の存在しないという、いわゆるところの百合ゲーであり、そこに軽めのホラー要素と世界観にまつわる謎を交えた作品。

キービジュアルや登場人物紹介を見て抱いた印象そのままの、華やかで重苦しい世界観になっています。


多少のバトル要素もありますが、ホラー要素も含めそれら全てが「キャラクターを掘り下げ、表現するため」に描かれているのがポイント。百合作品とは何よりまず、キャラクターの感情を追いかけるジャンルですね(持論)。

百合


まず何より肝心の百合度に関してどうかというと、これがもう全編を通して100%百合で構成されており、百合のないシーンが存在しない。
登場人物に男性はゼロです。

本作における百合はだいぶシリアス寄りな「女性が女性に向ける感情全般」として描いている印象。
当然愛情の矢印が相互に向き合う関係性もありますが、それ以外にも「あの人と対等でありたい」、「あの人に負けたくない」、「あの人に惹かれたくない」など多様な矢印が存在しており、普段ライトな百合コメディしか触れていない私にとっては新鮮だった。

逆に、ライトな「女の子同士がユルい雰囲気でキャッキャしてるだけ」みたいな、コメディ的百合シーンはほぼゼロ。
そういうシーンを期待してプレイするゲームではありません。まぁ公式サイトなどを見れば察しのつくポイントではある。

ホラー演出


ホラー要素に関してはかなりライトであり、プレイヤーの恐怖を煽って怯えさせるような演出はほぼ無い。いわゆるビックリ系の演出もナシ。
ただ歪んだ乙女のスチルは非常に禍々しくて怖かった。

出血などの演出もないので、スプラッタが苦手な人も大丈夫です。
客層を選ぶようなホラーではなく、百合を引き立てるためのホラーという感じかなあ。
(バッドエンドルートで1つ血が出るシーンがあるけど)

世界観の謎


百合と同様に作品全体を通して引っ張られるのが、世界観にまつわる謎。

プエラリウムの中にある一貫された謎のルール、学園を覆う茨の壁、造化と呼ばれる技術、そして学生たちを襲う歪んだ花嫁、アルエットが時折夢で見る知らない光景…劇中に登場する、プレイヤーの気を惹くために用意された要素が、全てきちんと物語の中で意味を持っています。

そしてそれがどういう理由でそこにあったのかがすべて説明されます。

多分だけど、未回収の伏線はないはず。
設定も伏線も感情も、すべてを明かしていく物語。

満足度

この「見せたいものを見せて、やるべきことをきちんとやって、完結した」のがゲームとしてとても誠実だったと思う。
もちろん面白かったしキャラクターは魅力的だったんだけど、それは前提として、ゲームとして、プレイヤーに対してずるい売り込み方や引っ張っておいて腰砕け、みたいな要素がなかったのが素晴らしい。
その辺はさすがベテランのライアーソフトというところだろうか。

クリアしたときの満足感は高く、見たいものを見て終わった感じというか、まさに過不足のない物語。

あえて言うとロケーション・シチュエーション的に遠くへ向かう話ではないので、人によっては世界が狭く感じるかもしれない。
まぁ世界観やストーリーを踏まえると「意図的に狭く」描写されていると思うけれど。閉鎖された女子だけの学校・寮が舞台の物語だからね。

そういうシーンについて

R指定のタイトルなので当然あるわけですが、ここだけはちょっと不満。
ヒロイン7人に対してシーンが7つあるんですが、その内訳がモブカップル1:カップルAのシーン3:カップルBのシーン1:カップルCのシーン1:カップルDのシーン1という。
分かりづらいけど、登場キャラのうち一人だけ異様にシーンが多い子がおり、他のキャラは1つずつという構成です。
そのキャラが好きなキャラだったので(そもそも嫌いなキャラもいないが)文句というほど文句でもないんですが、もうちょっとバランスよくしてほしかったかな…。

では以下ネタバレ。
エンディング全ルートをふまえたキャラクター別の感想です。

ネタバレ

マコー&パヴォーネ

カップルとして一番刺さったのがこの二人で、一番王道に「百合」と言われて想像するような関係性を構築していたと思う。
1章で二人ペアの(片方死んでるけど)異造化を出しておきながら、パヴォーネを想うゆえに一人で死んでいくマコーの美しさよ。

だからこそ、間に3章を挟んでパヴォーネが一人で遅れて異造化する姿が痛ましい。一人ずつだからこその百合。
バトルパートの描写も短めでシマンを拾うイベントも無く、さっと済まされたのが「そりゃあんな状態のパヴォーネはそうなるでしょ」って感じがして酷薄かつ納得かつ辛辣で好き。

そしてなんでマコーだけシーン3つもあったんだろう。
うち2つはマコーのソロで、パヴォーネ自身はカプ相手なのにシーン1個というのがなんか意図的なものを感じる。

ロビン&キャナリー

こちらもかなり王道の百合カップル。
…に見えて、臆病で慎重なキャナリーの変化、ロビンに食らいついていく感情に触れていて、誤解を恐れずに言うと少年漫画っぽい。
怖さを理解した上で自分にできる戦い方を選んだキャナリーは、この作品で一番強い女の子なんじゃないだろうか。

一方ロビンの調査パートはまるで探偵のようで、謎まみれだったこの作品に最初に分析のメスを入れたキャラクター。
というか作品世界の謎を解く鍵はほとんどロビンが一人で導いてて、しかも埋葬後の対応まで予め済ませておくという手の入れよう。本作MVPは間違いなくロビンだった。

めちゃくちゃ強いカップルだなここ…。
エンディング後は二人でどこか遠くまで行って欲しい。

アヴェルラ

もうめちゃくちゃ好きになった。最高のキャラクター。

これはちょっとずるいところがあって、アヴェルラは他のキャラと違って普段は描写が少なく、一方で終盤にルートに入ると、物語がアヴェルラ視点に切り替わってプエラリウムに来る前から今までを一気にまとめて開示されるストーリー構造になっている。
それゆえにプレイヤーは間断なく、キャラクターとして用意されたアヴェルラのすべてを一気に味わい尽くすことになるのだ。

おかげで彼女の痛ましい生まれ育ちから、アルエットに惹かれる過程、そして結末までをまとめて脳に叩き込まれてアヴェルラに負けてしまう。アヴェルラ好き。

まさか彼女がアルエットをああいう目で見ていたなんて、マジで想像していなかった。

なんかちょっと態度優しいなと思うことはあったけど、辛辣なシーンのほうが多かったので「ちょっと柔らかさを見せちゃう作家のクセとかかなあ」なんて思っていた。
まさか全てコントロールされた上で、そういう感情をチラ見せしていたなんて。
完全にやられた。

特に好きなシーンなんですけど、終盤の8回の選択肢を無駄行動に使って到達するバッドエンドルート、アルエットが死んだあとだけどアヴェルラが駆けつけてくれるんですよね。
もうちょっとあんた(ルク)が躊躇っていれば間に合ったのに!と嘆くのが本当に好き。アルエットのこと好きすぎ。

オルロ

彼女も凄い好きだったし、こういう「主人公たちがいる設定上のステージ」のワンランク上にいるキャラクターというのが超好きなんだけど、それだけに最後いなくなってしまったのが本当に悲しい。
機械人形の姿で、全部終わったあとのアルエットたちと一緒にいるところが見たかった。ほら…アドラー先生死んじゃったし、代わりに先代エヴァーメイデンが教師役とか良いじゃない…。


アルエットと二人で秘密のお話をするところ、完全に夢とか精神世界とかだと思って見ていたから、こっちのほうが現実なのはマジでびっくりした。
「揺蕩っていた」という表現がそのまんまなのも面白い。これは再読性の高い気が利いた言葉選びだ。

あとシーンがなかったのも惜しい。
こういう女性性とかそういうものを超越した人外系のヒロインめちゃくちゃ好きなんですよ…。

アルエット&ルク

まさか主人公カップルで殺害百合(そんな単語はない)を見ることになるとは…。
機械人形というのは、愛ゆえにカップルが片割れを4回殺しても大丈夫というまさにエポックメイキングな設定だった。ワートリのトリオン体みたいな。

アルエットがルクをエヴァーメイデンから引きずり下ろすという、エゴまみれの願望を押し通したのも良かったですね。恋愛とは究極的にはエゴのなすりつけ合いなのだなあ。
アルエットと過ごす日々がちょっとずつルクを変えていった…わけじゃないのがいいよね。あれはアルエットのわがままなのだ。

強いて言うなら、ルクがアルエットに惹かれる過程をもっとじっくりたっぷり見たかったなあ。まとめて読ませてもらった分、アヴェルラの方がべた惚れしてる印象になっちゃった。
看病のシーンなどの、プエラリウムが研究所だった頃のエピソードを1章分くらい見たかった。

機械人間

こんなわかりやすいキーワードが出ていたというのに、登場人物の中に3人も機械人形がいたなんて全く気付かなかった(これは私がアホすぎるだけな気がする)。
その中で主人公がそう、というのはまぁベタといえばベタだったのかもしれないけど、まさかルクもそうだったなんて。


そして各バトルパートのあとの、アルエットとルクが別れるシーンよ。
てっきりこういう非日常シーンの終わりにありがちな場面転換のためのシーンと思っていたのに。
このルクのセリフが本当にそのままの意味だったことが判明した時のビビビッという感覚が最高に気持ちよかった。

エンディング後について

唯一大きな不満点を上げるとしたら、エピローグがものすごく短かったこと。

登場人物たちの関係性という意味ではしっかりと回収されたけど、埋葬組がどんな調子で帰還を果たしたのか(EDに1枚絵はあったけど)、管理者の手を離れたプエラリウムがどうなったのか、茨の壁がなくなったときどうするのか、そして何よりアヴェルラは助かるのか。

EDから1年位経って、ロビンとキャナリーがプエラリウムを出ていってたまに手紙送ってくるとか、回復したアヴェルラがリハビリしてたりとか、そういうアレコレを見せてほしかったぜ。
世界観そのものが魅力的だったからこそ、アルエットとルクの満足げなシーンだけでエピローグが終わってしまったのは、本当にもったいなかったと思う。

多分、世界観が広がりすぎてアルエットとルクの物語ではなくなってしまうからだと思うんだけども。
本編後の世界を描くアフターストーリー小説とか出してくれないかなあ。

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