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K2名作エピソードランキング 「日常に潜む病」編

2023/03/05

今日は医療漫画の話!

私の愛好している漫画「K2」は、カラコルム山脈にある世界第二位の標高を誇る山…ではなく、1988年から連載されているスーパー系医療漫画「スーパードクターK」の続編「Doctor K」の更に続編のタイトルです。

「スーパードクターK」と「Doctor K」はほぼ地続きの漫画ですが、「K2」は同じ世界ながらも主人公が変わっており、本作からでも楽しむことができます。

K2とは

「スーパードクターK」「Doctor K」は世紀末救世主伝説的な画風でハードボイルドに描かれる医療漫画で、時に漫画としても突飛な展開がありながらも、医療をテーマにした漫画として10年ほど連載されていました。

その連載が完了した8年後に始まったのが、より現代的な路線にスイッチして『現代医療の進歩』や『超人的な医者に頼らない技術の進化』などにより強くフォーカスを当てた「K2」なのです。
連載はすでに19年と超長期連載になっており、既刊は44巻(2023年3月現在)。

これだけのボリュームがあると途中から入るのは大変そう…と感じられそうですが、なんと今コミックデイズで最新話以外全話無料をやっております。
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今回はすでに400話を超えてるK2のエピソードの中から、選りすぐりのおすすめエピソードを勝手に語る記事になります。
深いネタバレはボタンを押さないと表示されないようになっておりますのが、初見のインパクトを大事にしたい人はこのページを閉じてさっさと無料配信を読みましょう。

自分の身にも起こりうる、「日常に潜む病」編

今日紹介するのは、比較的自分にも起こりうる日常的な病にさいなまれるエピソード。
市販薬で様子見をしてしまいそうな、ささやかな初期症状から発生する重篤な病気の怖さを教えてくれます。

漫画の中にはもちろんK先生がいるので大抵快復しますが、我々はこれを軽んじることなく自分の足で医者にかかりましょう。

第31話「咳」


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一也が通う小学校の先生が罹患する話。
次代のドクターKたる一也の診察眼と、一方で足りない知識を現役Kが補い先生を救います。

また、一也の将来についての話も触れられており、K2の物語の起点となるエピソードの一つです。

ネタバレ感想

逆流性食道炎は、最近はすっかりメジャーな症状ですね。
なんか一時期テレビでよく見かけた気がする。それだけ身近な症例なので、咳だからと軽視しないようにしたいですね。

吐瀉物から出血源を見抜く冷静な一也がこのエピソードのポイント。
将来有望なドクターKの後継者の片鱗を覗かせています。

第106・107話「認知症」


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年老いた父親が、深夜にうつろな目で冷蔵庫を漁っている姿を見てしまった男性。
他数件の症状を見たところから、父親の認知症を確信するが…。

今なお解決し得ない「認知症」にふれるエピソード。

ネタバレ感想

前編の展開が後編で一変する、ミステリー仕立ての話が衝撃的。
年老いた父の認知症…と思わせて、まだ働き盛りの男性によるレビー小体型認知症に話が変わるのが恐ろしい。
いくつかの診察をこっそり下していくK先生と、認知症を疑われた父の表情がとても悲痛。

息子に認知症だと疑われた父親と全く同じ否定の仕方と、当事者に切り替わった息子がしているのが痛ましすぎる…。
まず病を受け入れることに高いハードルがある、って話はK2で時々やっていますね。

認知症に対して具体的な治療方法が無い、というのも重たく、K2では珍しい「完治」の出来ない症例です。
漢方薬というアンサーは示しているものの、やはり対症療法。
T村は住民の距離感が近く、みんなの病気に対する意識が高いので、周囲の理解と協力を得ることが出来ますが、これを真似ることが出来る家庭は早々無いでしょう。

きちんとした医療漫画だけに、漫画の中にしか存在しない都合のいい新薬が出てこないのが、この漫画の真摯なところです。

先日エーザイが新薬の承認を受けてニュースになっていましたが、これも進行を遅らせるもので「治療薬」とはまたちょっと違うようです。
その「進行を遅らせる」がどれくらい画期的で効果的なものか素人にはわかりませんが、大きなニュースになっているからには有用なんでしょうか。

第169~171話「拒絶」


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みんな大好き宮坂さんの登場回だ!
みんなー!宮坂さんの登場回が来たぞーー!

アレルギーを持つ人の大変さや命のリスクの重たさが感じられる、宮坂さん抜きでも読んでおきたいエピソード。
今どきアレルギーを好き嫌いと勘違いするような人はいなくなった…と思いたいですが、実際そんなことないんだろうなあ。

3話の中で大きくストーリーが動き、アレルギーの話・治療の話・宮坂さんの話と変遷していきます。

「うちの学校、ミスコンなんてやってるんだ。ヒマだね」というセリフに、一也の女性への好奇心の薄さが伺えます。

ネタバレ感想

経口免疫療法の話もさることながら、171話における宮坂さんの黄金の精神ぶりを話したい。
素人が刺繍針で縫合なんて、と慌てるクラスメイトに対して「もしものことはもう起こってしまっているのよ!」と返す宮坂さんのかっこよさよ。

このまま治療するにはリスクがあるけれど、だからといってリスクを避けて患者が死んでしまっては取り返しようもなくなってしまう、というK2において頻出する「医者の心構え」を、誰に教わるでもなく身につけているのが素晴らしい。
第1話では医者の立場から「命を諦めたとき、お前は医者ではなくなる」というK先生の説法があったけど、逆に言うと「命を諦めない気概がある限り、医者の素養がある」と言えるのかもしれない。

このエピソード以降再登場しない帰国子女のお嬢さんですが、ハンカチを使って術野を確保したりと、彼女もそれなりに治療に加わっているのがまた美しい。

K先生も舌を巻く宮坂さんの縫合技術も、読んでいて気持ちのいいところですね。

第226・227話「リベンジ」


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長編エピソードの途中なので、できれば一連の流れの中で読んで欲しい話。
一也の高校3年生時の話で、転校してきた医療に詳しいクラスメイト譲介がメインとなっています。

彼が出会った交通事故にあった男性が患者。
足を強く打ったというが、目に見えない足の内側で起こっている異変とは…。

ネタバレ感想

交通事故に合えば大抵医者にかかることだろうとは思いますが、K先生の言う「外科領域でも珍しい、待ってはいけない手術」というのがシリアスで怖い。
足がパンパンに腫れ上がってしかも冷たい、触れられてもわからない、など具体的な症状が出ているので、これを読んだ人は同じ症例で見落とすことはないだろう…。

ストーリーとしては、医術を他人へマウント取る手段くらいに認識していた譲介の大きな転換点。
事故にあった男性を見捨てず汗だくで診療所へ連れて行ったことといい、やっぱ譲介って根が優しくて真面目なんですよね。育ちでひねくれた性格を、徐々にほぐしていくエピソードの一端ですね。

第231話「嗅覚」


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一也大学生編の一話。K先生ではなくKEI先生の医者としての技量を示すエピソードです。

KEI先生の病院にやってきた男性が、突如咳き込んで倒れてしまう。
しかしこの患者は腰痛で来院しており、喘息患者なら持っているはずの吸引器も無い。
果たして彼の抱える病とは。

ネタバレ感想

医者の道を選んだ宮坂さんに、一流の女医の姿を見せるための回ですね。
一也がKAZUYAの、そして今のK先生を目指して学んでいるように、宮坂さんが学ぶための覚悟を決める回でもあります。

また、患者のかかったアスピリン喘息は、血液検査などの通常のアレルギー検査では判定されない(らしい)。
「飲める薬が大幅に制限される」という非常に厄介な症状です。

湿布でかぶれる、歯磨きで咳き込むなど日常起こりうる出来事が症状として起こるので、見逃さないようにしたいですね。
中年になって急に発症、突然の発作で命に関わることもある、と油断ならない病気。

第261・262話「合宿」


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一也たちが大学2年生になった頃の話。
運動部の合宿をサポートすることになった一也たちだったが、部員の一人が風呂を沸かしている最中に倒れてしまう。

大量の医大生が集まる合宿で起きる、少しコミカルだけど油断ならない健康トラブルの話です。

ネタバレ感想

20年くらい前には「運動中に水を飲むな」なんて指導がありましたが、今となっては「過去あった馬鹿げた体育指導」の象徴みたいな話ですね。
だからといって、飲みすぎては今度は別の障害が起きてしまうという。

特にここ数年は夏場の暑さが異常ですし、意識して水分を取るシーンでは逆に摂りすぎないよう気をつけなければなりませんね。
にしても、まさかスポーツドリンクでも電解質バランスが崩れる可能性がある、とは知らなかった。

また、患者の救助をする過程で、読者にもわかりやすく一次救命処置の手順を示してくれているのも興味深いところ。
一次救命処置については日本赤十字社のサイトなどで解説してくれているので、これを機にチェックしておきましょう。

回復体位とは、体を横にして上側の手を頭の下に入れ、気道を確保します。
名前で勘違いしてしまいますが、この体勢にするとHPが回復するわけではなく、意識がない・もうろうとしている人にひとまず取らせて、喉をつまらせたり吐瀉物で気道を塞いだりを防ぐための体位だそうです。


あとK2では珍しく、明確なギャグシーンがあるのも見どころ。
症状を一也が即座に診断して、深刻化する前に治療できたのもあって、見やすくて楽しい話でした。

312話「第二の救助」


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一也の大学の同級生が自宅で不審死を遂げる。
司法解剖の結果、彼は自宅のベッドの上で「溺死」したことが判明し…。

身近な友人の命が失われるという、一也メインのエピソードでは珍しく、重たくて悲しい話です。

ネタバレ感想

サスペンスドラマのような雰囲気が印象的ですが、これもまた日常起こりうる事例でしょう。

溺れた少年の方はまだしも、助けた唐木も肺水腫を起こしてしまうというのが本当に怖い。
上気道から気管は直接つながっているため、食事中に飲んだ水が気管に入ってむせる、というのは誰しも体験したことがあるでしょう。

それがほんの僅かな違いで、時に命を奪うことも起こりうるという…。
さすがに食事中にむせて肺水腫になることはないと思うけど、プールや海で溺れたときはきちんと医者に診てもらうべきってことですね。

一也が予測した唐木の死亡前日の症状も、セキや熱など風邪とそう違いないもの。
進行するとチアノーゼが起きて肌や唇が紫色になるそうなので、素人でもその辺りで「これは普通じゃないぞ」と気付けるのかな。

第379話「交差」


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コロナで休学中、帰省した一也と一也に会いに来た宮坂さんが遭遇する事例。
農作業中に体調を崩して倒れた男性を診察するうち、二人はある現象に思い至る。

ネタバレ感想

アナフィラキシーショックはもうメジャーな症状ですね。
メジャーだからこそ、交差反応という付随する事例も知っておきたいところ。
ちなみに「交差免疫」という言い方もされるそうです。

宮坂さんと一也が協力して患者を診る、というのがもうエモの塊。
K先生が宮坂さんをスカウトするくだりも合わせて、これも読んでいて気持ちのいい回ですね。

第413~415話「COVID-19」


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今なお猛威をふるっている新型コロナウイルスの治療を掘り下げる回。
一也たちはすでに大学を卒業しており、研修医として働いている頃です。

薬の問題・行政と病院の問題・患者の治療の3話立てで、コロナとの戦いを多面的に描いています。
コロナに悩まされている現代人こそ読んでおくべきエピソード。

ネタバレ感想

T村の診療所では描けない、現代の病院がコロナと戦う姿。
特に一時期ニュースでよく見かけた「ECMO(エクモ)」がどんな機械で、どんな効果のあるものなのか深掘りしてくれるのが興味深い。
血液のガス交換を機械でやることで、肺の負担を減らす機械だったんだ…マジで知らなかった。
当たり前だけど、「コロナ患者を軽快させる魔法の機械」ではないのだ…。

機械の数だけでなく、それ以外に大量の人手が必要というのも、テレビをぼんやり眺めているだけだと思い至らなかったなあ。
「担当医は当分家には帰れんだろう…」という言葉が重たい。

後のトレード編の前フリみたいな感じがしますね。

というわけで、初見の人でも楽しめるK2のエピソードから名作を挙げてみました。
いずれも日常起こりうる、ささやかな症状から重篤な疾患につながるエピソードなので、読んでおくといざという時の心の備えになるかもしれません。

正直今ある440話全部名作なので全部紹介したいんだけど、さすがに感想書いている間に無料期間も終わってしまいそう。
もう何度か、別のコンセプトで集めたおすすめエピソード紹介が出来たらいいですね。

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