The Cabin Factory
今日もお手軽ロープライスホラーゲームの感想ですよ。
最近こういうゲームばっかやってる。1時間くらいでクリア出来て500円くらいの、小粒な代わりにアイデアで勝負してるタイプのホラゲー。
The Cabin Factory
リリース日 | 2024年12月13日 |
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価格 | 350円 |
というわけで今日のレビューは『The Cabin Factory』。
いわゆる「8番出口ライク」な異変を見つける系のゲームで、映画やテーマパーク業界向けに恐怖体験を楽しめる「キャビン」を提供するメーカー「The Cabin Factory」が舞台。
このメーカーの提供するキャビン(英語で「(簡素な木造の)小さな家,小屋」…という意味だが、日本人的にはロッジと言ったほうがしっくりくるね)には「霊が取り憑いている」という虚偽の噂が広まっているという。
主人公はこのメーカーの検査員となって、実際に商品であるキャビンの中に入り探索して、霊がいないこと/居た場合はそれを報告するのが仕事。
主人公は大変めずらしい老婆タイプ。
とはいえ背筋も伸びて姿勢は良く、移動が極端に遅いとか走ってると疲れるみたいな要素はありません。むしろだいぶタフな方。
こちらが操作パネル。
キャビンを検査したあと、霊がいないなら緑のボタンを、霊がいるなら赤のボタンを押しましょう。
8連続で正解するとお仕事は終了して、一旦エンディングを迎えられます。
霊現象
キャビンの中には父・母・子の家族が暮らしている様が再現されており、とある日常のワンシーンを覗き見るような雰囲気。
さて、このゲームにおける「霊現象」の条件はたった一つ。
それが「動いていること」です。
まぁ上の画像の紙に書いてあるとおりなのですが、本作ではそれが「動いているかどうか」だけが問われます。
つまりどんな怖いものを見ても、それがピクリとも動いていない場合、それはホラー体験設備の製造メーカーが作った怖い製品でしかない、ということ。
変化を見つけるゲームではないことに注意しましょう。
動いている、というのは基本的には見ていればわかるレベルなので、間違い探しのように各所を凝視して暗記する必要はありません。
というか他が動いていない中で動くものを見つける、というゲーム性の仕組み上、立ち止まって各所を丁寧に見ていけば見逃すことは殆どありません。
そしてそもそも、プレイヤーが見逃してしまうように配置されたものは殆どありません。
中には家の奥、2階まで行かないと発生しない現象もあるので、ざっと眺めて終わりではなくきちんと調査しましょう。お仕事だしね。
(一部、動き終わったらもう観測できないものもある)
隠した謎を見つけてごらんなさい、というゲームではなく、探すという体験を通して恐怖を味わってくださいというゲームなんですね。
ちなみにストーブの中の火、梁にかけてある布、空気中に漂ってる白い光(ほこり?)は「動いている」の対象外です。
意外にもドラマのあるゲーム構成
起きている異変のうちいくつかは、連続性のあるストーリーを持っています。
それはこのキャビンに暮らしている家族の物語であり、ここで何が起きたのかを断片的にですが知ることができます。
全ての異変を見る+一回エンディングを見ることで、このゲームの全容がおおよそ知れるでしょう。
私は思わず「なるほど!」と膝を打って感心してしまった。
かつて夜勤事件のレビューのときに書いたけど、ホラーってその現象が起きるバックボーンくらいは知りたいですよね。
このゲームは、その個人的な欲求にバッチリ答えてくれました。もう大満足です。
ここ最近は「POOLS」「霊迷の湯」「Welcome to Kowloon」「LiminalCore」など小規模ホラーゲームをたくさん遊んできましたが、本作はリプレイ性の高さと一貫したゲーム設計で大変クオリティが高かったです。
一番と言ってしまっていいレベルで満足度が高かった。
以上、『The cabin factory』のレビューでした。
いやあこれは思わぬ掘り出し物でしたよ。程よく怖く、追いかけたい謎があり、その期待に応えてくれる。
よくぞこれを350円なんていう価格で出してくれたものです。
こういう「趣味が合う」ゲームメーカーを見つけられるのは嬉しいですね。
今後もチェックしておこうと思います。
一応、以下に見つけられた異変の一覧を書いておこうと思います。
結構判断を問われる要素あるよね。
ネタバレあり
透明鬼ごっこ・1
透明な霊に追われるというもの。霊の姿は目に見えないが、模型の中の人形と足音でだけ察知ができる。
長時間触れるとデスしてしまうので、上手く回避しよう。
霊は玄関から入ってきて、母の肖像画の前を通って階段前まで行き、戻って来る。足が遅いので回避は簡単。
透明鬼ごっこ・2
1の上位版。透明な霊の数が4体に増え、狭いキャビン内をうろついている。
赤い人形が階段を出てパパの座っているところまで行ったら階段を駆け下りて、向かいの席の場所に退避(安全地帯)。
廊下を往復する霊が目の前を通り過ぎたら、最短ルートをダッシュで駆け抜けよう。
多分あと2体いるうちのどちらかに当たるけど、デスしきる前に玄関を抜けられるはず。
飛ぶリモコン
どういう趣旨なのかわからないけど、カエルのぬいぐるみの手元にあったリモコンがふんわりと宙を浮く。
これも動きがゆっくりしていて、わりと分かりづらい。
カエルが膨らむ
カエルのぬいぐるみがゆっくりとだが大きく、小さく変化する。
動き自体はループしてくれるが、変化が小さいのでしばらく見ていないと気付けない。
足ぶらぶら息子
2階にいる息子が、足を小さくぶらぶらとさせているだけの異変。
怖くないが、動きが小さいので見つけづらい。
ニヤリ息子
電源の入っていないテレビを食い入るように見ている息子。
ガラスに写った顔が自分を見てニヤリと笑う。
安楽椅子息子
階段にブランケットが落ちており、2階からは息子が消えている。
1階に降りると、誰も座っていなかった安楽椅子に息子がすわっている。
椅子が動いているので「DANGER」。
ちなみに接近しすぎるとデスする。
こっちを見てくるパパ
パパの視線がプレイヤーを追従するようになる異変。
最初は中々判別がつかず、2階から降りるときに気付きがち。
窓割りパパ
窓の向こうにパパがいる異変の一つ。
じっとしているようで、近づくと窓ガラスを割ってくる。
追いかけてくるパパ
窓の向こうにパパがいる異変の一つ。窓の向こうに立っているが、すぐ姿を消してしまう。
キャビンから出ると追いかけてきてチェイスが始まる。
この時点でDANGER/CLEARのボタンは消えており、異変を打ち切ることができない。
これはエレベーター入口の右にある扉をくぐって逃げる、というのが正しい解答なのだが、追われ始めた段階ではドアが開いていないため、迷っている間に捕まってしまう。だいぶ難易度の高い異変の一つ。
追いかけてくるママ
2階まで探索して降りてくると、肖像画の前にママが立っている。
キャビンから出ようとすると追いかけてくるので、急いでDANGERボタンを押そう。
パパのときと違い、この工場フロアの出口から出る必要はない。
肖像画のママ
肖像画の中のママが、自分を視線で追いかけてくる。
というよりは肖像画の中にいるのか?
肖像画から出てくるママ
2階から降りてくると、肖像画の中がからっぽになっている。
家から出ると軒先にママが立っている。
この人形と対面したままじっとしていると、実績にまつわるイベントが発生する。
追いかけてくる娘
2階から降りるタイミングで小さく笑い声が聞こえる。
階段降り口に娘が現れ、追いかけてきて捕まるとゲームオーバー。
結構シビアなタイミングで、のんびりゲームしていると気付いても間に合わない場合がある。
コレは時間が短すぎてスクショ撮れなかった…。
ベッドの下に手
かなり気付きにくいが、ベッドの下から子供の手が伸びている。
音も立てず、隅々まで見ようとしないと視界に入らない。
自分がいる・1
2階まで探索して降りてくると、パパの向かいに自分がいる。
追いかけてきたりはしないが、いなかったはずの自分が突如現れる異変。
自分がいる・2
同じく2階から降りてくると、安楽椅子のあるあたりの柱の梁に自分が隠れている。
巨大ぬいぐるみの家
家中に巨大なぬいぐるみがレイアウトされている異変。
かわいいぬいぐるみのはずなんだけど、個人的にかなり怖かった一つ。
引きずられていく足
玄関を開けると足首が引きずられていくのだけが見える。
追いかけても何もないので、ちゃんと目撃しないと気のせいかと思っちゃうかも。
ポルターガイスト・1
ダイニングテーブルの前に差し掛かったところで、テーブルの上の皿などが突然吹き飛ぶ。
察するにパパは子供にこう家具が飛び交ってしまうほどの暴力を振るっていて、その示唆だろうか。
ポルターガイスト・2
パパの前のマグカップがゆーっくり動いている。
本当にゆっくりなので、結構しっかり見ていないと気付けない。見落としやすい異変ナンバーワン。
ドアが開いている
ダイニング向かいの扉が開いている。
入れないのだが、2階から降りるあたりで歌が聞こえ始め、ドアが閉まる。
電話
ストーリー性のある異変の一つ。
子供たちが親からの虐待を訴えるも、相談員が相手にしてくれないという若干胸糞悪い異変。
地下室
何もないかと思い玄関から出ようとすると、娘にドアを塞がれている。
代わりにダイニングテーブルの向かいにある扉が開いており、地下に降りられるようになる。
本作のストーリーの根幹を示す、重要な異変の一つ。
火事
このキャビンで起きた事件の最終的な時系列であろう異変。
2階に登った時点で画面が赤くなり、1階に戻ると家が燃えている。
キャビン内ではなぜか両親のみが炎に巻かれており、外に出ると平然とした顔の子どもたちが燃える家を眺めている、という中々おぞましい光景。
異変の見る順番で感じ方がだいぶ変わりそう。
家の中の炎にはダメージ判定があり、長時間触れていると死ぬので注意。
子どもたちの背後にあるドアから出るとクリアー。
ラジオ
キャビンに入るとラジオが鳴り出す。
何ひとつ動かないので「CLEAR」なのだが、これもここで起きた事件を明らかにする異変の一つ。
階段の上から覗く娘
2階に向かおうとすると、娘が上から垂れるようにこちらを覗き込んで来ている。
だいぶぞわっとくる変化だが、これは「ピクリとも動かない」ので、CLEARになる。
つまりは「The cabin factory」が作ったホラー体験ハウスの一環、ということですね。
階段下にいる娘
階段の隙間に娘が閉じ込め?られているように見える。
のだが、「しー」と自分の存在を隠そうとしているようにも見える。親から逃げているのだろうか。
誰も動かないので「CLEAR」である。
この人形と対面したままじっとしていると、実績にまつわるイベントが発生する。
窓から覗き込む父親
窓の向こうからこちらを覗き込んでいる。
ここから全く動かない「CLEAR」の場合と、その場で窓ガラスを割る「DANGER」と、キャビンから出ると追いかけてくる「DANGER」があり、油断できない。
この人形と対面したままじっとしていると、実績にまつわるイベントが発生する。
窓を割るバージョンでは達成できないっぽい。
テレビを見ている息子
テレビを食い入るように見ている。
映り込んだ顔が笑う異変(DANGER)もあるが、表情を変えない(CLEAR)板。
肖像画が凶悪なママ
一見怖いが、動かないので大丈夫なやつ。
一家勢揃い
肖像画の前で一家が勢揃いしている。
いかにも何かありそうだが、動かないので「CLEAR」。
食事中の家族
個人的に一番グロテスクな「CLEAR」。
パパとママが普通の食事をしている一方、テーブルももらえない娘と息子は食パン一斤をはんぶんこしている。
これがゲーム分類上は「DANGER」では無いというのが一番グロい。
2階の息子も、食事中だからか顔に被っているタオルを脱いでいる。
この人形と対面したままじっとしていると、実績にまつわるイベントが発生する。
逆さまの家
家具や人形が全て天井にくっついている。
だいぶ異変的だが、何もかも動かないのでこれは「CLEAR」となる。
巨大ぬいぐるみの家
家中に巨大なぬいぐるみがレイアウトされる。
このぬいぐるみが動くバリエーションもあるが、動かない方は当然「CLEAR」になる。
異変は多分これで全部…のはず。
まぁ攻略情報ないと見落としてしまうかも、っていうのはマグカップとベッド下の手、膨らむカエルくらいかしら。
あとは追ってくるパパの対処とかかね。
実績は
- 8連続で異変を当ててクリアー
- 全てのキャビンで正解する
- 父と対面してモノローグを見る
- 母と決別してモノローグを見る
- グレタ自身と対面してモノローグを見る
- 弟と対面してモノローグを見る
- シークレット(メニュー画面の「ジャンプスケア」をオンにする)
の7つで全部。
いずれの対面も特定のキャビンを引き当てないといけないため、何度も何度もお目当てが来るまで周回するハメになりました。
おかげでクリアの風船が大量に溜まったわ。
考察
主人公である老婆は、この家の長女であるグレタ当人。
彼女が仕事として検査することになったキャビンは、彼女が幼い頃暮らしていた家だった。
この家では父母による子供への虐待が行われていた。
父は(ガラスを割ったり食器が飛ぶような異変から察するにおそらく)暴力をふるい、母は子供を言葉で恫喝した。また食事もまともに与えることはなかった。
弟の被っていたタオルは、暴力のあとを隠すためのものかもしれない。
両親のいる1階へ降りることはせず、テレビにだけ逃避していた。
姉はどこにも居場所がなく、食事すら階段で取らされていた。
この家から逃げ出そうという計画を立てていたが、母親にバレ、しかも弟を人質にすることでその計画をくじかれた。
助けを求めて110番通報するも、電話口の相手はこちらの話をまともに聞いてはくれない。
地下にある浴室には、子供二人の名前と「何か」をカウントした跡が残されている。
虐待を受けた回数だろうか。
4人家族の家なのにベッドは一つしかない。
テーブルには椅子が二脚しかない。
この家には、夫婦のためのものはあっても、子どもたちのためのものはほとんど置かれていないんですよね。
かくして決意した姉弟は、家に火を付け逃げ出すことを選んだ。
ラジオではこの火災を報じているけど、ここで父母はともに死亡したことが明言されています。
一方で姉弟は行方不明、かつ放火であるとみられる証拠まで掴んでいる模様。ただ、幸か不幸か、その後逮捕されてしまったようなことを示唆する情報は無いかな?
クリア後に訪れる自宅には、父母の顔部分をちぎった姉弟の写真や、弟のぬいぐるみが置かれている。
おばあちゃんの隣に若い男性がいる写真もあるけど、年齢的にあれが弟なわけはないし、子か孫が持てるくらいにはまっとうな暮らしを出来たということかな。
最後クローゼットからのぞくキャビンは、グレタが未だにあの空間に心を引っ張られているという示唆と、一方でそれに蓋をして目をそらすことが出来ているという、精神が安定した証なのかもしれない。
ただオールクリア後に見られるアレを思うと、果たしてこのグレタという女性自体、本当に存在するのだろうかとも思ってしまう。
キャビンファクトリーの作った世界観から、生きた人間が動き出してしまったのかなあ、とか。きちんと自宅があるからそれはないかな?
最後には「つづく…」の文字。
あの一家の話としては完結しているけど、本作が十分以上に面白かったので、続きがあるならまた遊びたいぞと思える良いゲームでした。