りゅうおうのおしごと!
つい昨日までアニメが放送中だった「りゅうおうのおしごと!」。
原作を読んでみたらこれがまぁ面白かったので今日は原作のレビューです。
あらすじ
玄関を開けると、JSがいた――
「やくそくどおり、弟子にしてもらいにきました!」
16歳にして将棋界の最強タイトル保持者『竜王』となった九頭竜八一の自宅に
押しかけてきたのは、小学三年生の雛鶴あい。きゅうさい。
「え? ……弟子? え?」
「……おぼえてません?」
憶えてなかったが始まってしまったJSとの同居生活。ストレートなあいの情熱に、
八一も失いかけていた熱いモノを取り戻していく――
ということで、本作は「ライトノベルらしいライトノベルさ」と「ガチで描写される将棋の世界」という二本の軸で構築されています。
あらすじにもあるとおり、突然かわいいかわいい女子小学生が家に押しかけてきて弟子入り志願をしてくる、という甘いボーイミーツガールな導入は、いかにも昨今主流のラブコメ系ライトノベルの毛色です。
さすがに女子小学生なのでお色気シーンなんてものは無い…こともなく、単行本1冊につき1回あるかどうかってところですが、あります。
弟子入りしてくるあいちゃんの他にも、主人公八一の姉弟子や妹弟子など、巻を進めるごとに八一を取り巻く女性関係は広がっていきます。
ただ、本作は女の子とのイチャイチャコメディはあくまで前菜。
本命、物語の山場は「プロ棋士たちによる厳しい将棋の世界」がメインとなってきます。
その世界に一歩足を踏み入れてしまうと一気に女性キャラがいなくなり、八一たち「男性プロ棋士」しかいない孤独な戦いの世界が広がっているのです。
主人公の八一は、あらすじにもあるとおり16歳という若さで竜王のタイトルをとった若き天才棋士。
しかしタイトルを取って以降一気に調子を崩し、現在11連敗中という身の上。
若すぎる身に背負った重すぎるタイトルに苦悩する八一は、素直に「将棋が好き」なあいちゃんと出会うことで昔の情熱を思い出していきます。
同じ作者の前作「のうりん」でもそうだったように、ライトノベル的テンプレートに則った序盤の展開はあくまで、奥深い将棋の世界へラノベ読者を誘導するための呼び水。
読み進めていけば、歯を食いしばり汗を流しながら盤面を通して相手と向き合う棋士たちのアツい物語にいつの間にかハマっているはずです。
もちろんラノベ的ラブコメ部分が適当というわけではないですが、話のピークはいずれも将棋の世界の話。
棋士たちがこんなにも厳しい世界で戦っていたのかと気付かされ、読み終わったあとには「ただのボードゲーム」とは言えなくなるでしょう。
そんな厳しい世界を突然描写しても、誰も喜んでくれないのは冷静に考えてみなくても当たり前の話。
そこへ読者を気持ちよく誘導するテクニックが本当に多彩で巧妙なのが、この作品の一番のウリでしょう。
「幼女・おしかけ・正妻面・ラブコメ」なんて要素と「将棋」を直線でつなぐセンスよ。
当然本作は将棋を知らない人でも楽しめるように構成されていますし、ちょくちょく出てくる将棋豆知識も知識欲を刺激する程よさ。
その知識をただ披露するだけでなく、きちんと物語に織り込んでお出ししてくるのはさすがベテラン作家というところ。
とりあえず3巻までは買ったので、読み進めたらまたレビューしたいと思います。