東京都立呪術高等専門学校 第一話
ジャンプGIGAにて2017年に全4話で連載されていた、本誌の「呪術廻戦」の前日譚。
先日本編に登場した真希先輩や棘くん、パンダが一年生の頃のお話。
なので今一年生の伏黒や虎杖、釘崎さんは出てきません。
これがもうたった4話なのに死ぬほど面白かったのでその感想です。
ネタバレ多分に含みますのでご注意ください。
ちなみにジャンプGIGAは2017年当時から週刊少年ジャンプの電子版定期購読をしていれば、勝手に本棚に登録されているはず。
購読していない人も単巻でジャンプGIGAを購入できますが、一応4話の最後に呪術高専単独でのジャンプコミックス化が告知されているので、遠からず出るはず。
同時期に連載していた「モミジの棋節」(今同じく本誌でやってるやつ)のジャンプGIGA版はもう単行本出てるのになー。
第一話「呪いの子」
呪術高専の主人公は、特級呪物に取り憑かれた気弱な少年「乙骨憂太」が主人公。
本編の中で特級に取り憑かれた虎杖と違って、憂太が取り憑かれたのは幼い頃。
それゆえ人格形成にも大きく影響を与えています。
気弱な性格ゆえにいじめに合っていた憂太。
しかし憂太に取り付いた特級呪物「里香ちゃん」がいじめの加害者へ襲いかかる。
虎杖・宿儺の関係と同様に、呪物をコントロールできないゆえの展開がありますが、里香ちゃんのポイントは憂太を守るために他者を襲うこと。
この憂太と里香ちゃんの関係性を軸にして、4話かけて本作中の「呪い」を描写・昇華していく構成になっています。
呪術廻戦の一話レビューなどでも触れたとおり、本作は呪いを「バトル展開に使う魔法的パワー」ではなく「他人から他人へ向けられる想いが変じて力を持ったもの」として徹底して描写されています。
それがこの漫画の特異性でもあり、よくあるバトル漫画を見飽きた、ちょっとヒネた読者に突き刺さるポイントでもあります。
互いに結婚を誓うも、憂太が小学生の頃に自動車事故にあって死亡した里香ちゃん。
この2コマが同じ見開きにあるのがえげつない。
「憂太と一緒にいる」「大人になったら結婚する」
という約束を『呪い』となり、呪物となって以降憂太に取り付いた里香ちゃんは、憂太を守るために暴れており、その呪いを解くために呪術高専に転入してくるのが一話のストーリー。
一話は結構素直な展開で、憂太が押し殺していた本心を明らかにして、呪いにまつわる現状と戦い始める。
本編中の里香ちゃんは実質怪物として大暴れしてるんだけど、憂太が本気で頑張り始めた時に、頭の上半分が吹き飛んだ里香ちゃんが応援してくれるシーンがあるのが最高。
里香ちゃんは呪物として大暴れしてるけど、その核には間違いなく憂太の知る里香ちゃんがあるという基本中の基本に気付く大切なシーンです。
普通なら最終話で明らかにしそうな「里香ちゃんを呪物にしたのは自分の方かも」という発想の転換を1話の最後に持ってくる大盤振る舞い。
自分のせいで呪いになってしまった(かもしれない)里香ちゃんをあの世に還すことを誓って一話は終わり。
巨大な化物が登場したりもするけれど、そのバトル自体は里香ちゃんに任せて、憂太は別のところで頑張る。
一話は徹底して呪い、ひいては受動的・能動的な感情の動きの描写に終始するのが本当最高に良い。
普通里香ちゃんを武器にして戦ったりするよね一話目なんだし。
それをやらないんですよこの漫画は。
ただやらないだけじゃなくて、その分人の内面の動きとかにちゃんとページを割いて、精神面の成長ドラマをきちんと完成させてるのが素晴らしい。
結構長くなっちゃったので2話以降の感想はまた後日書きます。