フォルスモール
リミナルスペース系ロープライスゲームへの好奇心が尽きることがない。
多分年内最後になるであろうゲームのレビューは、『偽夢』で有名なテンカイゲームズさんの異変探しゲーム『フォルスモール』です。
フォルスモール
リリース日 | 2024年8月26日 |
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価格 | 470円 |
『フォルスモール』はショッピングモールの隅の一角をループして異変を見つける、ウォーキングシミュレーター。
前作『偽夢』を始めとしたゲームと比べて、ホラー感がかなり薄めに設定されており、どちらかというとパズルゲームのような感覚で遊ぶことができます。
一応ストアページには「精神的恐怖」タグがついているけど、プレイヤーを怖がらせてやろう、という異変はほとんど登場しませんでした。
ただ、人のいない空間を探索しながら歩くことによる、皮膚がうっすら冷たく感じるようなリミナルスペース的体験はしっかりと味わえます。
きちんとイヤホンをして、周囲の音に耳をそばだてながら探索することをおすすめします。
はぴあモール瀬良
舞台となるのは「はぴあモール瀬良」という地方のショッピングモール。
その隅っこの廊下から始まり、このループする通路に起きた異変を「カメラで撮影」し、非常口から出ると次のループへ進める。
最終的には非常口から外に出るのが目的となる。
『8番出口』ライクのご多分に漏れず、8回連続ノーミスで異変を発見すればクリア条件達成。
正解するごとに上の時計の針が一時間ずつ進んでいき、9時になると非常口からループを抜けて脱出できる。
難易度はかなり低めで、一部見つけにくい異変はあるものの、大抵は一見すれば気付けるくらい。
中には思わず笑ってしまうようなコミカルな異変もあり、リミナルスペース的なうっすら寒い空気感の一方で、ゲーム体験自体はそこそこ牧歌的になる。
ループする廊下はショッピングモールの片隅らしく、屋上フロアへ通じるエスカレーターやエレベーターがある他、トイレやガチャガチャ、地元イベントを紹介するポスター、舞台となる瀬良市の公式キャラクター「トマちゅん」もいる。なんか異様にくたびれたポーズでうなだれている。
エスカレーターや別エリアに通じる廊下は通れなくなっているので、探索するのはこの一筆書きで回れるような廊下のみとなる。
「こういう風景」の再現度がとても高く、地元ショッピングモールの隅っこっぽい生々しさがすごい。
日頃真面目に視線を向けない保険屋のポスター、車持ちでもないと用がない屋上エリアへのエスカレーター、そして非常口。
普段30秒で通り過ぎてしまうような箇所に、意外と膨大な情報量があるんだなと思わされる。
ゲームシステム
ゲームが始まると、プレイヤーは「撮影」ができるようになります。
異変を見つけたらこのカメラでターゲティングして、撮影しましょう。撮影できる対象には真ん中に四角い照準が表示されます。
逆に何も無い場所では、十字のアイコンだけ表示されており、ターゲティングのアイコンである四角が表示されません。
撮影に成功すると、四角いアイコンが青い丸に変わります。
が、失敗するとそれ以降撮影ができなくなり、その時点で失敗となります。
撮影が終了すると、正解でも不正解でも非常口の扉が開き、先に進めるようになります。
本作では複数の撮影対象が1ループに登場することが多くありますが、撮影が終わらない限り開かないので、今撮影したもので全部かで迷うことはありません。
また、異変が1個もない場合は自分の意思で非常口の扉を開けることになります。
このゲームで最も親切な要素のひとつ。
ループの出口となる非常口を抜けると廊下スペースがあるのだが、ここで今歩いたループのどこに異変があり、自分が見つけたものが正解だったかどうかを教えてくれるのだ。
間違っていた場合「必ずご確認ください!」の看板とともにどこに間違いがあったのかを教えてくれる。
開けた非常口から戻って確認することもできるので「結局さっきの何が正解だったんだよ~」となることはないのだ。
正解がわからなくて延々と繰り返すような虚無時間がシステム的に排除されているので、誰でもじっくりやっていれば必ずクリアー出来るのが優しいですね。
更に一度クリアすると、毎回かならず異変が起きるモードをオンにできるため、未回収の異変確認がサクサクです。
偽夢のときにもあった異変一覧もあるので、全回収がかなりやりやすくなっています。
異変の全回収、記事用のスクショ撮りもして私は3.3時間でした。
異変の合計はなんと74。一気にクリアする量じゃないので、デスクトップに置いておいてたまに遊びながらフルコンプを目指すのがちょうどいいと思います。一日一周で8個を目標にするとかね。
誰もが歩いたことのある空間
地元にあるイオンでも歩けば実際に出くわせそうなこの光景が本当にたまらない。
ゲーム上他のフロアへは行けないようになっているけど、多分この上には駐車場として開放してる屋上フロアがあって、カート置き場と自販機が並んでたりするんだろうなあ。
ショッピングモールの隅っこにある、多分あんまり使われていないであろうエレベーター。
現実だとこういう通り道でしか無いエリアのベンチには老人がずっと座っていたりする。
この右奥にある階段と防火扉のかもす「ショッピングモールの階段」ぽさがたまらない。
せっかくのデジタルサイネージだが、公告を出稿してくれる企業がいないのか、ショッピングモールのキャッチコピーしか表示されていない。
本当にもう、この景色を周回するというだけで満足のできるゲームでした。
でもこの満足度に共感してくれる人すげえ少なそうな気もする…。
以下に、異変のネタバレを含む感想も書いておきます。
今回異変の数が74と多いので、1つ1つを併記しての攻略的な記事は作っていません。答え合わせがゲーム中で出来るので、記事にしておく意味がないしね。
ネタバレを含む感想
記事の中では牧歌的とか、怖くないという書き方をしたけど、本作は都市伝説的な怖さをゲーム内に盛り込んだという意味では、確かに精神的恐怖に通じるホラー要素を含んだゲームでもありました。
一番のお気に入りは、この無限に下へ伸びる階段。
一度降りたら戻れないのは察していたけど、我慢できずガンガン降りていってしまいました。その先で起きたことも含めて大満足の異変。
この無限エレベーターも大好き。最後閉じ込められるところまで含めて本当に最高の異変でした。怖いより興奮が勝っちゃう。
あとはこれね。
閉まるシャッターの中に残る、という現実ではやれないけどその向こうどうなってんの?って気になるシチュエーションが体験できて嬉しかったな。
どこか都市伝説的というか、地元の小学生たちが噂にしてそうなネタが多かったのがツボでしたね。
一方で、本当になんでもないピクトグラムが変わっただけの異変みたいな、かさ増しのために入れたような異変が結構あったのは残念だったかな。
その割、フードコートへ通じる廊下や、上階がちらっと覗けるところに絡めた異変はかなり少なかったのも惜しい。
トマちゅんが襲ってくるような異変もあるだろうと思っていたんだけど、そういうかたちで恐怖を煽ってこなかったのは意外だった。
記事の最初の方でも書いたけど、意図して怖すぎないよう調整をいれたのかなーと感じるところがある。
画像は私の好きな、これから天井に激突することが伺えているトマちゅん。
絶対襲ってくるタイプだと思ったのに、むしろトマちゅんの方が異変の被害を受けてることが多かった気がする。
ということで『フォルスモール』のネタバレ込みレビューでした。
ショッピングモールという舞台から、都市伝説っぽい妄想が広がる系の異変に出会えたのはとても楽しかったです。