Keep Digging

久しぶりに変なゲームの話をしよう。
『Keep Digging』は鉱夫になってひたすら穴を掘るという、珍奇なゲーム。
プレイヤーの目の前には好き放題穴を掘っていい地面が用意されており、そこを地下1000m目指してひたすら掘るのがこのゲームの唯一の趣旨。
ワンコインで購入できるコンセプト一点特化のゲームですが、そのコンセプトに寄り添った上で、更に遊び心の豊富なゲームでした。
値段 | 550円 |
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発売日 | 2025年9月11日 |

これが主人公。体格を無駄に調整できるキャラメイク機能がある。
ゲーム中は一人称視点なのでまったく画面に映らないが、最大8人のマルチプレイがあるためムダ機能ではない。

これがプレイヤーに掘ることを許されたスペース。
四角く囲われており、その範囲内の地面は完全にプレイヤーの裁量で掘り放題である。
シャベルをザクッと入れると、シャベルのレベルに応じた量の土が掘り返される。
掘った土自体は消えてくれるので、掘ることだけに集中することができるのだ。
何が楽しいんだコレと思われそうだが、これがもう最高にたまらなく夢中になってしまい、3時間かけてクリアするまでほぼぶっ通しで遊んでしまった。
ひたすら同じ作業に没頭する楽しさ

マイクラの整地だとか、RPGのレベル上げだとか、淡々と同じことを繰り返す系の楽しさ。
それが理解できる人はもう永遠に掘ることができるでしょう。
以前紹介した「PowerWash Simulator」の遊び心地に近いかも。
完全にシングルタスクのゲームなので、掘るというたった1点に集中していられるのです。
本当はいくつか、ただ掘っているだけじゃ駄目な要素もあるんだけど、それも掘る楽しさを邪魔しないように設計されており、プレイヤーを掘る以外の工程で苦心させないようにゲーム自体がデザインされている。

ただし本当にただひたすら地下に向かって掘れば良いというわけではなく、定期的に地上に帰還しなければならないようにもなっています。
そのため、帰る手段のなくなる「直下掘り」は、このゲームの特に序盤では、良い掘り方とは言えません。
エネルギーゲージ

プレイヤーは生命力としてエネルギーゲージを持っており、穴を一回掘るたびに1ptそれを消費していきます。
エネルギーの初期値は100。
これを使い尽くしてしまうと、このフロムめいたデス演出とともに死亡してしまいます。
死んでも全てパーになるわけではないものの、穴掘りと並行して行われる鉱石の回収において、インベントリに入った状態の鉱石は失われてしまいます。
鉱石回収によるお金稼ぎとレベル上げ

地面を掘っていると鉱石が見つかり、これを売却することでキャラクター性能やシャベルを強化していくことが出来ます。
当然に深度を深めていくほど価値のある鉱石が出るようになり、画面左下の赤いカバン(インベントリ)に入るだけ持ち帰り、売ることで次のマイニングの準備をするわけですね。

鉱石の売却、強化は地上でしか出来ないため、これが「ひたすら直下掘りだけしていればいいわけじゃない」ゲーム要素として機能します。
エネルギーの管理、鉱石を持ち帰ってのアップグレード要素。
穴を「帰り道を確保しながら」掘るのがこのゲームの要点の一つになっているわけです。
なので掘るにしても、登れるよう斜めに掘ったり、定期的に足がかりとなるスペースを作りながら掘っていくのが模範解答になるんですね。
なおいくつかのギミックで踏み倒すことも可能。
掘った先に見る謎の建造物

地下を掘り進めていくと、時折地下道に遭遇します。

ここにあるマンホールはファストトラベルポイントとして、地上への帰還に役立ってくれる他、周囲を探索するとエネルギーを自動補給できるバッテリーや、掘削を手伝ってくれるダイナマイト、拠点へ帰れるワープストーンが見つかることもあります。
…ワープストーンってなんだよ!世界観わかんねえよ!
主人公がバッテリーで動いて充電すると回復する人間なので、おそらくプレイヤーはアンドロイドなのでしょう。実は近未来か?

そして更に深く潜っていけば、もっと予想外の光景も…。
仕様

このゲーム、開始すれば直ちに自由に動けるようになり、かつ何も説明してもらえません。
ある程度は察することができるように作られていますが、ゲーム終盤まで気付けなかった要素もあったので、ここに説明しておきます。
ゲーム仕様
- ゲーム開始時に結構長い読み込みがある。
おそらく地形情報を設定してるんだろうけど、これは2回目以降のゲーム起動時には発生しない。 - ゲーム内にセーブポイントはないが、ゲーム終了時に保存される。
プレイヤーキャラ
- キャラデザはゲーム開始後も、拠点にあるロッカーから変更できる。
- 鉱夫は高所から落下してもノーダメージ。
- 登り力がアップすると、多少きつい傾斜でも登れるようになる。
稼ぎ要素
- 上の画像の地面つついてる鉱夫たちは、プレイヤーのために鉱石を回収してくれてる。
並びのコンテナにたまった鉱石は、プレイヤーの裁量で出荷(売却)して、利益を得ることができます。
宝箱から得られる鉱夫レベルアップを取得すると、時間あたりの収益が上がります。 - 鉱石はたまにデカいのがドロップし、とても高額で売れる。
ワイヤー
- ワイヤーロープは、アップグレードすると移動速度が上昇する。
エネルギーの消費はなくならないけど、消費あたりの移動距離が上昇する…けど、レベルMAXにすると早すぎてコントロールしづらくなる。
『進撃の巨人』の立体機動装置並。 - ワイヤーロープは、上昇だけでなく横移動にも使える。
Shiftキーを押しながら前後左右に移動するだけ。
ダイナマイト
- ダイナマイトは、序盤威力が低すぎて使い物にならないが、レベルMAXまで上げると1つで地面を5mほど掘削できるようになる。
- ダイナマイトによる掘削は、鉱石が発生しなくなる。
すでに表示されている鉱石を吹き飛ばすことはない。 - ダイナマイトの爆発に当たると、ダメージとしてエネルギーを持っていかれる。
掘削に使うなら、多少深めに掘った穴に放り投げるように使おう。 - ダイナマイトは妙な放物線で飛んでいくので、狙ったところに投げ込むのは難しい。
バッテリー
- バッテリーを所持している場合、エネルギーが尽きたとき自動で使用してくれる。
- バッテリー、ワープストーンはお金では入手できない。
けどクリアまで使い切れないくらいの数が手に入ると思う。うちはバッテリーが36個、ワープストーンが20個余った。
カラースプレー
- カラースプレーはお店で購入することで使用できる。
掘れるエリアの奥にいるおじさんに話しかけると1個(1回吹いたら終わり)単位で購入する。 - カラースプレーは岩肌に色をつけることができる。
複数掘った先のメインルートを示しておくとかに使える。
けど上から掘ったら当然色は消えちゃう。
遊び心豊富なゲーム設計

「掘る」ゲームではあるんだけど、このゲームで一番面白いと思った部分。
なんとこのゲーム、土を「盛る」ことも可能です。
基本的には詰み防止の一環なのかなと思うんだけど、この盛る機能、当然地上でも使うことができる。
しかもマイクラのように重力に引かれて崩れること無く、まるで触手のように伸ばしていくこともできるのだ。
見た目がちょっとうんこみたい。

ひたすらに土を盛っていけば、並びにある建物の屋上フロアに乗り込むことも可能。

道路の方まで土を伸ばし、自我を持った自然が人間文明への侵略をはじめたごっこもすることができます。
土を盛るのは、掘るときと同様にエネルギーを1Pt使うのみなので、質量については関係なく野放図に盛ることが可能です。

他、穴掘りエリアの周囲をきちんと探索すると、エネルギー用の充電バッテリーを始めとしたアイテム類が置いてあることも。
このマップ周辺を探索することが無意味じゃないゲーム構造が本当に好みでして、ゲームにやらされるのではなく、プレイヤーの好奇心が始めた探索に価値が生まれるようデザインされているのが素晴らしい。
不満点
楽しいゲームだけど、無いではない。

掘れる面積が意外と狭い。
好奇心の赴くままに掘っていると、前後左右の限界である石壁にぶつかってしまい、これ以上は掘れなくなる。
あくまで下に向かうのが目的なので、別方向に掘り進んでいけばいいだけなんだけど、この自由に掘るゲームで限界を感じてしまうのがさみしかった。

さすがに飽きる。
最初のうちはワクワクしながら掘りまくり、ここらで一旦小休止できるスペースを作るか…みたいな遊びをしていたものの、700mあたりからはさすがに飽きが来てしまい、ワープストーンとバッテリーが使い切れないほど余るのもあって、ひたすら直下掘りが模範解答になってしまった。
これはもしかしたら、自分が前半500mで丹念に探索を楽しんだせいで、アイテムをしっかり回収していたからかもしれない…。
あるいはマルチ前提のアイテム配分だったのかも。
あとは、インベントリがいっぱいの状態で穴を掘っていると、掘る手前にある鉱石に当たり判定が発生して「インベントリがいっぱいです」のメッセージが出て地面を掘れなくなる仕様。
これは狭い穴を掘っているときはマジで頻発していたので、アプデで改善してほしいね。
これくらい!マジで!
あと全部楽しかった!
やりたいと思った先にご褒美が用意してある、意外と丁寧な作りのゲーム

ロープライスな上にシンプルそうなゲーム性から、ちょろっと遊んで満足したら終わりくらいに思っていたんだけど、想像していた何倍も丁寧に作ってあるゲームでした。
ゲームのストレス要素になりそうな部分はカットしてあり、プレイ自体がまず快適。
マップのあちこちに遊びが仕込まれており、探索自体にリターンがあるのも楽しい。
その気になれば直下掘りでガンガン深く潜っていくのも簡単だし、あえて途中に開けた空間を作って楽しんでも良い。
任意の場所に、プレイヤーが臨時の拠点を設置できるくらいの要素があっても良かったかもしれない。

メインはもちろん穴掘りなんだけど、地上にもお楽しみ要素があったのも嬉しい。
穴を掘っているとたまに見つかる化石は、回収した分が奥のスペースに展示されます。全部揃えると実績解除もあるぞ。

本当にどうでもいいところだと、換金役のおじさんの後ろにある車が押せば動くこととか。

周りのマンションに登ると、窓の中から部屋が覗き込めてレイアウトも何パターンかあるとか。

あとはギリギリネタバレにならない範囲だと思って言うけど、クリア時に自分がこれまで掘ってきた穴が客観視できるのも面白い。
これは良くぞ入れてくれた演出だと思う。
達成感的な意味でも、プレイヤーは絶対に客観視できない穴掘りの経過を最後に見せてくれるっていうのも。

というわけで、楽しく遊び心に満ちたゲーム『Keep Digging』でした。
画像は土盛りを繰り返して並びのマンションを登ったところ。
ちなみにクリアすると、強化要素は全て残したまま掘削をリセットして遊べます(というか一度リセットしないとクリア判定にならない)。
おれたちは永遠にこのゲームという永遠の虚から抜け出すことができない。
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